こんにちは、山崎です。

整体師やセラピストの方なら、「姿勢」についてクライアントからアドバイスを求められる機会は多いと思います。

僕自身、30年間頭痛や腰痛などの痛みで苦しみ、自力で克服するために実践研究する取り組みの中で、この「姿勢」についても日々研究を重ねてきました。

今が最も理想に近い姿勢だと実感していますが、巷で言われているような、形だけ整った姿勢が、理想の姿勢ではありません。

今回は、そんな「理想の姿勢」とはどんなものなのか。ということについて詳しくお伝えしていきます。

 

目次

1)一般的な「理想の姿勢」

まず初めに、一般的に世間で言われている「理想の姿勢」とはどういうものか見ていきましょう。

一般的には、

1)耳たぶ
2)肩峰
3)大転子
4)膝蓋骨の後方
5)外くるぶしの前方

上記5点が、だいたい1本の垂直軸に乗っていると、「骨の配列」が良くなります。

一般的には、この「骨の配列」がまっすぐなことを「理想の姿勢」と言われていることが多いです。

ですが、これは、ただ「形」がまっすぐなだけであって、僕たちが目指す「理想の姿勢」ではありません。

では、僕たちが目指す理想の姿勢とはどういったものでしょうか?

2)目指すべき姿勢とは?

僕たちが目指すべき姿勢とは、

「なるべくリラックスしているが、いつでも即対応(動くことが)できる準備が整っている心身の状態」のことです。

野生の動物の姿勢が良いというのは、なんとなくイメージできるでしょうか。

野生の動物は基本的にはリラックスしています。

ですが、敵が攻撃を仕掛けてきたら、即「感性」が反応して、闘うか逃げるかの行動を起こすことができます。

ただリラックスしているだけではなく、最低限の緊張は保ち、「感性」が働いているのです。

つまり、人間でも一見姿勢が良いように見えたとしても、即反応できなければ意味がありません。

表面上ただ整っているだけであって、中身(質)が伴っていないということになります。

2-1 美しい姿勢とはなにか?

1)でお伝えしたように、骨の配列が揃っているというのは、「理想の姿勢」の要素の一つであり、それだけでは「美しい姿勢」とは呼べません。

姿勢とは、「勢いのある姿」と書くように、その人の内面や態度を身体に現したものだと考えています。

つまり、何かにチャレンジする姿勢や、物事に対する姿勢を含めた、動物的な感性と人間的な知性が組み合わさったものを、究極に美しい姿勢と言うのではないでしょうか。

2-2 姿勢の3つの構成要素

まとめると、目指すべき美しい姿勢の構成要素は、

1)感性
2)知性
3)形(骨格の配列)

であり、このいずれかが欠けると、美しい姿勢には見えません。

勉強する姿勢や好奇心などもその人の姿勢に現れているので、こうした視点で姿勢を見抜けるようになれば仕事や対人関係でも大いに役に立ちます。

3)理想と現実

では、実際に理想の美しい姿勢を作り、現実化させていくためには、どのようにすれば良いのでしょうか。さらに踏み込んで見ていきたいと思います。

3-1 理想と現実

まず、押さえておいてほしいのが、理想と現実のギャップです。自分では、

1)美しい姿勢(形)だと思っていても、他者からは美しいと見えない。

2)これが即動ける姿勢だと思っていても、実際に第一歩を瞬時に踏み出すことができない。

3)これが痛みの出ない姿勢だとおもっていても、実際には筋肉が緊張し、痛みが発生してしまう。

といったように、ほとんどの人が思い込みの状態であり、頭と肉体がバラバラになってしまっています。

例えば、肩をギューッとすくませてみてください。肩がすくんだ姿勢はエネルギーが上にあがり、肩にブレーキがかかり、滞っている状態です。

客観的に見ても違和感であり、勢いはありません。

こうした身体の緊張や違和感に一つひとつ気づき、取っていく(ゆるめる)ことで、自分の身体を思ったように動かし、コントロールできるようになっていきます。

このように、身体から客観的に観察していくことで、理想を現実化させていくことができます。

3-2 立ち位置を把握する

目的地へ向かうには、「地図」が必要です。

自分の立ち位置(スタート)を把握し、目的地(ゴール)を明確にして、「地図」の通りに進んでいけば、確実に理想の姿勢へと近づくことができます。

ですが、ほとんどの人は、そもそも自分の身体がどうなっているのか、立ち位置を把握できていません。

まずは、自分の身体の状態がどうなっているのか、自分の立ち位置が今どこにいるのか「内観」して現状を把握する必要があります。

それと同時に、どのレベルまでいきたいのか?という理想もなければ目的地には向かうことができません。

どんな姿勢になりたいのか?どんな人間になりたいのか?自分の理想をイメージしてみてください。

4)イチロー選手の動きが美しい理由

昨年、現役を引退したイチロー選手の動きは誰が見ても美しいと感じます。

イチロー選手は、試合に最大限のパフォーマンスを発揮するために、毎日同じルーティンで準備や体操をしていたというのはご存知の方も多いと思います。

これは毎日同じ準備や体操をすることで、その日、身体のどこが動きにくいのかという「違い」をチェックして、常に自分の今の立ち位置を確認しているのです。

この「違い」がわかれば、対策を練ることができます。

まずその「違い」を認識することがどれほど大事なのかをイチロー選手の日々のルーティンから垣間見ることができます。

また、優れたモデルも、毎日自分の体型を鏡でチェックすると言います。

どこに肉がついたのか、どこが痩せたのか等、同じように「違い」をチェックして立ち位置を確認しています。

こうした、一つひとつの意識の差が、意識していない人に比べて自分の身体に対する気遣いの違い差となり、それが美しさの源泉にもなります。

5)優れたソムリエの感性

優れたソムリエは、ワインの味の「違い」がわかる「味覚」を持っています。

また、優れた音楽家は、ドとレの間に100(やそれ以上)の音の「違い」を聞き分ける「聴力」を持っています。

ハンマー投げの室伏広治選手は、背骨の一つひとつを自由自在に動かせる「体性感覚」を持っています。

このように、感性は五感全てを豊かにするのが最も望ましいことではありますが、美しい姿勢を獲得したい人は、「体性感覚」を高める訓練を行うことが一番の近道です。

日常で立っているとき、座っているとき、歩いているとき、常に自分の身体がどうなっているのかを感じることで、全身の「体性感覚」を強化していきます。

こうして注意を払うことで、自分の身体の違和感に気づき、より最適な理想のポジションに姿勢が近づいていきます。

5-1 感性を高める体操

身体の感性を高めるには、例えば「ストレッチ」でも可能です。

ストレッチといえば、一般的には「筋肉を伸ばして柔軟性を高める」と言った目的で行われます。

これを、「身体の伸び(痛み)を感じる体操」へと発想を切り替えることで、単純な形のものではなく、質の伴ったストレッチへと昇華することができます。

何気なくストレッチするのではなく、ストレッチされている箇所を認識し、内観します。

自分の身体がどうなっているのかを、感覚的に知るという作業を全身徹底して行います。

こうした訓練を積み重ねることで、全身の細かな部位にまで意識を向けることができるので、自分の身体をよりコントロール可能にすることができます。

5-2 肉体的な体操

もう少し具体的には、

1)骨を感じる
2)筋肉の伸び・縮みを感じる
3)筋肉の緊張・弛緩を感じる
4)筋膜の張りを感じる
(*骨に感覚器はないので厳密には骨付近の筋肉のこと)

各部位にこうした4つの視点をもって体操や身体を動かしてチェックしてみてください。

5-3 触って伸ばして感じる

5-3-1 手や足などを触って感じる

さらに具体的に言うと、自分の手で、反対側の手のひらや、手の甲、足、などを触って感じてみます。

例えば、左右の手の甲を、順番にさすってみると、感覚を強く感じる方と弱く感じる方がわかると思います。(感覚が強い方が緊張していることが多い)

さするのを、腕の方から指先の方へ(遠心性)と流れをつくることで手の軽さや柔らかさを検証してみます。

5-3-2 イメージと感覚を一致させる

5-3-1 を徹底的に行なったあと、触らずに触った箇所に注意を向けて観察してみます。

ジワーッと感覚が残っているのを実感できるかと思います。

5-3-3 全身で行なう

体操を行ないながら、身体の伸びている箇所(痛みのかる箇所)に注意を向けてみて、全身を感覚できる身体を作り上げていきます。

こうした訓練を普段から徹底して行なうことで理想の姿勢を作ることができます。

5-4 背骨を使うコツ

もう1つ理想の姿勢にとって欠かせないのは、「背骨」です。

魚類から進化してきた脊椎動物は、背骨が最も強いので、先程の室伏広治選手のように、背骨を一つひとつ感覚して使えるようにしていくことは必須です。

しかし、人間(特に大人)は、普段「手足」を使いすぎているため、背骨があまり使えなくなっています。

背骨を使えるようにするためには、末端である手足を固定してがんじがらめにすることで、背骨が動くしかない状況を作るのがポイントです。

例えば、四つん這いになって、背中を丸めたり反ったりするNekoエクササイズは、床に手と足(膝)を固定することで、背骨を使う訓練になります。

こうして、普段使わなくなっている背骨の感覚を起こしていきます。

参照:)【保存版】最強スキル「身体の使い方」とは?

https://washinjyuku.com/seitai-prolog/how_to_use_the_body/

6)身体の痛みと姿勢の関係

肩こりや腰痛、膝痛など、身体に痛みを抱えている人の多くは、姿勢が悪いことが多いです。

姿勢が悪いというのは、どこかの特定の部位にもたれて局所的に負荷がかかり、筋肉の緊張を招き、交感神経が優位になり、血流が阻害され痛みが発生しやすい状態です。

整体施術では、一時的にその特定の部位にかかっているストレスを軽減し、筋肉の緊張が緩和されれば、刹那的に「痛み」が軽減されることはあります。

ただし、あくまでも刹那的であり、根本的に解消されているわけではなく、また元の状態に戻ってしまいます。

ですので、根本的に痛みの起こらない身体にするには、その人の痛みが出る身体の癖、姿勢の癖を見抜き、その癖自体を変えていく必要があります。

7)心の強さと姿勢の関係

7-1 心の強さの獲得

少し僕のお話をさせてください。

過去の僕は服装のセンスがなく、ファッションが苦手でした。

しかしある時、「ファッションが苦手なままの自分は嫌だ、克服してやる」という思いで、一気に今までの着ている服を捨て、ブランドのお店に飛び込んで、半ば強制的にファッションを変えた時期がありました。

初めはどんな服が良いのか、自分に合った服はなんなのかも全くわかりませんでしたが、逃げないと決断し、「がんじがらめ」の方向に持っていった結果、徐々に苦手を克服することができました。

苦手だからといって、いつもの方向(諦める癖)に逃げてしまっては、いつまでたっても自分を変化させることはできません。

ストレスをかけて、「がんじがらめ」の状況を作ることで、その中で新たな気づきやアイデアを発見することができるのです。

姿勢も同じで、姿勢が悪い人は、自分なりにいつもの方向(楽な方向)へと逃げてしまうため、刹那的には「楽」だとしても、長期的には姿勢は悪化への方向へと進んでしまいます。

7-2 フロー

つまり、心にとっても、体にとっても、「緊張と弛緩」両方が大切だということです。

緊張状態(ストレス状態)が強い人は「スキルアップ」すれば緊張状態から抜け出すことができます。

一方、弛緩が強い(退屈な)人は「チャレンジ」すれば退屈から抜け出すことができます。

スキルが上がれば、自分で問題を解消することができます。

チャレンジすればスキルは上がります。

緊張する場面では、心と体に注意を向け、緊張している箇所をゆるめるスキルを身につけること。

退屈な場面では、心と体に注意を向け、行動を起こすというチャレンジを起こすこと。

こうしたバランスを整えることで、張りのある姿勢、張りのある人生を歩むことができます。

8)姿勢を構成する知性とは?

8-1 知性とは

「知性とは、答えのない問いに対して、その問いを、問い続ける能力である」(田坂広志)

少し大きな話になりますが、いわゆる哲学とか、愛とはなにかなど、答えのある知能に対して、こうした知性には、これという明確な答えがあるわけではありません。

正しい答えが見つからないとき、僕たちの精神は「がんじがらめ」の状態に陥ると思います。

しかし、精神が「がんじがらめ」の状態に陥ったとしても、腹を決め、覚悟をもって目の前の問題に対して、「現段階のベスト」を尽くすこと。

このベストを更新し続けることが、理想的な(心と体)の姿勢を獲得できる道だと思います。

コンテンツに価値があるのではなく、その理想に向かって進んでいるかどうかがその人の「美しい姿勢」を現すのだと思います。

8-2 愛情とは、関係を断たぬことである。

「愛情とは、関係を絶たぬことである」(河合隼雄)

「愛情とは、知性の最も高度な形態である」(田坂広志)

人への愛情に限らず、自分の服や靴などの物への愛情、また仕事に対してどれだけの愛情を持っているのかがその人の姿勢ににじみ出るのだと思います。

今、できるできないにとらわれず、現段階のベストを尽くし、まだ先に理想があるんだという心の姿勢を持つことが最も美しい姿勢だと思います。

9)まとめ

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

美しい姿勢とは、単純に形が整っているというだけでなく、感性や知性、そしてその人自身の仕事に挑む態度、人生を生きる姿勢そのものが現れるものだと考えています。

これが正解というのはありませんが、理想の姿勢に1歩でも近づくためには、24時間体制で自分の心と体を観察し、その心と体がどうなっているのかを感じ取ることです。

また、自分のいる環境で急激な変化が起こっても、なるべくリラックスして、いつでも即対応(動くことが)できるよう、心身の準備を整えておくことです。

「いまここ」を全力で生きることが、あなたの姿勢に現れるのだと思います。

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